令和4年度 京大講演会

12月13日、高校1年生(7・8組)と中学3年生を対象に、進路について考える機会を提供するキャリア教育の一環として京大講演会を開催しました。2015年に始まり、8回目を迎えた講演会の会場はことしも百周年時計台記念館内の百周年記念ホール。京大のシンボルである歴史的な建物に足を踏み入れるとあって、自然と背筋が伸びます。
講演会は二部構成で行い、生徒たちは一部で京大の二人の先生のお話を、二部で洛南出身の京大生・院生によるパネルディスカッションを聞くことで、将来に思いを馳せました。

第一部 講演会1 「大学での研究とは 京大文学部と私の場合」

講師:金澤周作先生(京都大学大学院 文学研究科 教授)

イギリスを中心とした西洋史学がご専門の金澤先生には、ご自身の経験を踏まえて学問とは何か、そして大学での研究に必要な心構えなどについてお話しいただきました。
先生によると、学問とは「真(人間とはどんな存在なのか?)」「善(人はどう生きるべきか?)」「美(美とは何か?)」を探求することであり、その対象は地理的・時間的に無限大。中学・高校時代はいわば基礎固めの時期であり、これから学問や研究を「楽しむ」ためには「楽しくない」基礎をしっかり身につける必要がある、との言葉にみんな納得の様子でした。
また、大学での研究は自分の関心事をとことん突き詰めることにほかならず、そこにブレーキは不要。そうすることで世の中の深みに触れ、やがて自分なりの視座を養うことで、他者への思いやりの心を身につけられるというお話は研究者という枠を超え、人としてどう生きるべきかについて考える貴重な機会を与えてくれました。

第一部 講演会2 「理系という選択」

講師:妙本陽先生(京都大学大学院 薬学研究科 特定教授)

洛南出身で、京大卒業後に企業で医療機器の研究開発に携わっていた妙本先生はスティーブ・ジョブズをほうふつとさせるプレゼンを披露してくださいました。
ときおりギャグを交えながら進んだお話と、生徒との質疑応答は名言のオンパレード。たとえば研究に必要な心構えとして「知っていることは大切だが、知らないことも大切。それを知ろうとすることでより遠くのものが見えるようになる」。研究開発とは「志をともにする仲間たちと、世の中にはびこる不都合な現実と戦うことで新しい世界をつくること」。開発後に自分の手を離れ、ひとり歩きする製品の役目は「まだ見ぬ人びとの明日をつくること」。研究開発に携わる者にとって一番の励みとなる言葉は「『ありがとう』より『待っています』」。夢を叶えるには「やるか、やらないのか。最後は覚悟が必要」。
そのひと言、ひと言が胸に刺さり、気持ちを奮い立たせてくれるプレゼンでした。



第二部 パネルディスカッション

第二部は、京都大学・大学院に在籍する6人の卒業生と京大理学部出身の木村先生、そして妙本先生の計8人によるディスカッションを開催しました。各パネラーは事前に生徒たちから寄せられた質問に、それぞれの観点から回答してくれました。

【主な質問と回答】

苦手科目克服の仕方は?
苦手なのは基礎ができていないから。基礎はそれだけ重要ということ。
理系の場合、ひたすら問題に取り組む。そうすればできるようになる。
演習量に結果が伴わないときは?
数学の問題にはある一定のパターンがあるので、それを見つけること。そうすれば難しい問題も解けるようになる。
理系は演習量をある程度こなせば急に伸びる。結果が出なくても、努力を信じて演習に取り組むこと。
将来の夢をいつごろ意識した?
中学・高校時代は教員が夢だったが、大学院に通っている今はちがう。夢は変わるので、今やりたいことに沿って将来を考えればいい。
文理選択の際、「衣食足りて礼節を知る」という言葉に従い「食」を支える理系の農学を目指し、就職の際には「衣」に関わる繊維会社を選んだ。いずれも正解だったと思う。
洛南時代にやっておいてよかったことは?
部活に打ち込むことで集中力が養えたし、やりたいことを自分でマネジメントする力もついた。大学は自分で考えて学ぶところなので、自己マネジメント力がすごく大切。
勉強。24時間、勉強に集中できるのは学校にいるときだけ。社会人になるとできない。もちろん机上だけでなく、人と出会い、話して世の中のあらゆることを学んでほしい。
高校生・中学生へのメッセージを!
メインストリートより裏道を歩いた方がゴールに早くついたり、いいことがあるかもしれない。常識を疑いつつも、周りの人の価値観を尊重することでみんなにピースフルな未来を。
中学と高校の6年間は人格形成のとき。洛南にはいろんな人がいるので、みんなとつながり、周りの人を大切にすることで自分を高めてほしい。