12月18日、中学3年生と高校1年生(1・8組)を対象に京大講演会を開催しました。これは卒業後の進路について考える機会を提供するキャリア教育の一環であり、11回目となる今回の会場も京大のシンボル・百周年時計台記念館内の百周年記念ホール。講演会は2部構成で、1部で京大の二人の先生の講演を、2部で洛南卒業生によるパネルディスカッションを行いました。


第1部 基調講演
講演会1 「トランプ現象の政治経済学」
講師:柴山桂太先生(京都大学大学院 人間・環境学研究科 准教授)
「授業がとても面白い!」と、卒業生からの推薦によりご登壇いただいた柴山先生のご専門は社会学で、その中で世界の歴史の流れを経済学や国際政治学などの見地から分析されています。
20世紀末の冷戦終結により消滅した「壁」が再び建設されようとしている昨今の世界情勢を、「トランプの反グローバリズム」「地政学的対立」「覇権争い」といったキーワードから解きほぐし、その上で近い将来にアジアとアメリカにより新たな世界秩序が築かれる可能性があるというお話は卒業生の言葉どおり、非常に興味深いものでした。
柴山先生によると、中学・高校が教科書に載っている事実、すでに分かっていることを学ぶところだとすると、大学はその先に潜んでいる何か、つまりまだ分かっていない現象を自分で探し、解き明かしていく場所であり、その現象の数は膨大。このことを先生は大学1年生のとき、ある教授の講義を通して実感され、それはまさに「一生モノの出会い」だったそうです。先生曰く「22世紀の世界は今とは全然違うものになっている」とのことで、「それがどんな世界かを探りたければ大学へ!」という、生徒たちへのエールを込めた言葉でお話は締めくくられました。


講演会2 「研究で医療を支える」
講師:妙本陽先生(京都大学大学院 薬学研究科 特定助教)
洛南高校を1992年に卒業され、京大卒業後に企業や研究機関でガン治療の研究に取り組んでこられた妙本先生は3年ぶり、2度目のご登壇。今回はマイクを使わず、生徒たちに語りかけるように「生声」でお話しくださいました。
データを用いて課題解決に挑む「データサイエンス」により医療に貢献されている先生ですが、研究者としての道は就職後に味わった挫折から始まったとのこと。アレルギーのため研究に不可欠の動物実験ができず、失意のまま統計や物理を学び直し、「パソコンおたく」の強みを生かして編み出したのが「動物×データ」という手法だったそうです。
「うまくいかないのは成長の証し」「失敗しないために失敗する」「研究とは命を未来へつなぐ希望」「何かひとつ選ぶためには、そのほかのすべてをあきらめる覚悟を持て」「研究のミスは研究で償う」などなど。前回に続き、今回も先生のお話には印象的な言葉が続出。中でも最後の質疑応答で生徒に直接投げかけられた、「悩んだときには両親に、自分が幼かったころのことを聞くといい。そうすると熱中していたことを思い出し、きっと新しい道に進むことができる」というひと言は、みんなの心に深く刺さったことでしょう。


第2部 洛南卒業の京大生・京大卒業生によるパネルディスカッション
第2部では阿部先生と西澤先生の進行により、ご講演いただいた妙本先生を含む7名の卒業生がさまざまなテーマに基づきトークを繰り広げました。
【テーマ1】
学んでいること、志望理由、学部・研究科の特色などについて
- 農学部卒・現薬学研究科特定教授
「衣食足りて礼節を知る」という言葉が好きで、そのうちの「食」をつかさどる農業について学びたくて農学部へ。後に遺伝子解析の研究を始め、その流れでガン研究を開始し、それが30年続いている。 - 工学研究科卒・現工学研究科助教
ノーベル賞を受賞された北川進先生が発表された金属有機構造体「MOF」を用い、空気から二酸化炭素を取る研究を行っている。工学部を選んだのは、ものづくりを通して人々の暮らしを豊かにしたいと思ったから。 - 文学研究科
立命館大学3年生のときに経済学部から文学部に転籍。現在は日本史を専攻し、その中で、人々が飢饉や災害をどうやって乗り越えてきたのかについての研究を進めている。 - 農学研究科
食べることに興味があり、農学部へ。植物の生育に適した環境を人工的に制御した「植物工場」で作物を育てる研究に取り組んでいる。農学部は端的に言うとどんな産業にもつながり、何でもできる学部。 - 教育学部
心理学を学んでいて、将来は家庭裁判所の調査官になりたい。心理学は医学部、文学部、教育学部の3学部で学べるが、1学年に60名という人数の少なさに引かれて教育学部を選んだ。 - 経済学部
「理系経済」という、学生が25名しかいない、経済学部の中でも少し変わった分野に在籍。高1のころは京大の工学部に行きたいと思っていたが、次第に経済を学びたくなり現在の学部を選んだ。 - 理学部卒・現洛南高校教諭
高校の理科の教師になりたくて、教員免許の取得においては「最強」の京大理学部へ。学部では化学を中心に学び、大学院では生物化学研究室でミトコンドリアの研究に打ち込んだ。
【テーマ2】
工学部と理学部との違いについて
- 工学研究科卒・現工学研究科助教
理学部の目的は「知の探究」と考えている。一方、工学部は物理学や化学を駆使して現象を解明した上で材料を開発し、それを「社会実装」することを最終的な目的としている。
【テーマ3】
農学部と工学部との違いについて
- 農学研究科
工学部には同じ品質の機械や製品に関する研究が多いが、農学部は農作物や家畜など、一つひとつが個性を持つ「一点モノ」を学びの対象としている。その個性の違いを効率よく、正確に見極めるのが農学部の学びのやりがい。
【テーマ4】
理系経済と文系経済との違いについて
- 経済学部
理系と文系とで入試枠が異なるが、大学に入ってからは基本的に同じ扱いとなる。理系枠がある理由は、経済学は分野によっては統計やデータを使うなど数理的な能力が重要となるから。
【テーマ5】
特色入試について
- 教育学部
先輩から特色と一般とでチャンスが2倍になると言われ、チャレンジすることに。競技かるた部に所属し、また、体育祭の応援団で優勝したり弁論大会で優勝したりしたことを志望理由書に書いた。
【テーマ6】
他大学から京大大学院の受験について
- 文学研究科
所属する日本史研究室では古文書など実物の史料を使って研究し、その数も豊富。また、京大だけで約700万冊の本を所蔵するといった環境に引かれ、こちらを選んだ。当初は不安もあったが、今では自らの学問に真剣に向きあう人たちと共に学ぶことで、自分も成長していることを実感している。
【テーマ7】
京大を志望した理由、勉強の楽しさやモチベーションを上げる方法などについて
- 農学部卒・現薬学研究科特定教授
物事をしつこく調べる性格で、高校の先生に「そんなにしつこかったら京大に行ったら?」と言われたのがきっかけ。入試では100点を取らなくても40、50点で合格する。そう思うと気持ちが楽になり、モチベーションも上がるのでは? - 工学研究科卒・現工学研究科助教
理系経済に入りたかったが、国語と英語ができなかったので理数で押せる工学部に。テニス部顧問の先生の配慮で、授業の開始前、1時間ほど部活の仲間と勉強を続けた。誰かと一緒にやることでモチベーションを上げられたと思う。 - 文学研究科
京大を志望したのは学習環境の素晴らしさに引かれて。私も授業の開始前に友だちと一緒に勉強したのが大きかった。分からないところを教えあったり、模試について話しあったり、そういった時間が大変励みになったと思う。 - 農学研究科
京都出身で、昔から京大の存在をとても近くに感じていた。勉強については決して無理せず、自分を大切にしてほしい。ある日ふと、教科書の内容全部が分かることもあるので、あまり自分を追い詰め過ぎずに頑張ってほしい。 - 教育学部
中学の面談で先生に「京大行けるかも」と言われ、意識し始めた。勉強に励むようになった直接のきっかきは、失恋したこと。振った相手を見返したいと思うようになり、そういった感情がモチベーションにつながったと思う。 - 経済学部
京都生まれの京都育ちで、8歳のころから京大に憧れていたが、勉強は好きではなかった。ぼくがそうだったように、大学に入るとモテるとか、京大に入ったらカッコいいとか、どんなことでもいいので目標を見つけてほしい。 - 理学部卒・現洛南高校教諭
京大を志望したきっかけは京大講演会。勉強のモチベーションを上げるためには、なりたい姿をイメージすればよい。「自分はこうなりたい」という将来像が決まれば、イヤでも、面倒くさくても、しんどくても頑張れると思う。
【テーマ8】
京大ライフの楽しみについて
- 農学部卒・現薬学研究科特定教授
総合大学なので他学部の授業も受けることができ、それはとても刺激になる。あと、遊びやアルバイトの楽しみの幅も広がる。 - 工学研究科卒・現工学研究科助教
立地がよい。近くに鴨川があるし、北白川にはラーメン店が充実しているし、河原町にも近いので、そういった点でも楽しいと思う。 - 文学研究科
考え方が近い人が集まるので、話をしていて、とても楽しい。同じ日本史研究室の人たちと、『虚構史学』という雑誌をつくっている。 - 農学研究科
京大には変わった人が多い。夜中に突然、東京まで一人で歩いて行く人とか。そんな人が多いので、自分も何をしてもよいと思えてくる。 - 教育学部
教育学部では、学部独自の教育学部祭を開催。ステージ企画を立てたり、模擬店をやってみたり、それらを少人数で行うのはとても楽しい。 - 経済学部
日本で二番目の大学である、京大に入るときっとモテるだろうと思っていたのに、あまりモテていない・・・。 - 理学部卒・現洛南高校教諭
鴨川を歩くだけとか、ネコの鳴き声を聞くとか、京大にはいろんなサークルがある。自分は軽音部と美術部に所属。同じ趣味を持つ人との出会いは、大きな財産となる。




