令和5年度 京大講演会

12月15日、高校1年生(1・8組)と中学3年生を対象に、卒業後の進路について考える機会を提供するキャリア教育の一環として京大講演会を開催しました。9回目となる講演会の会場は、京大のシンボルである百周年時計台記念館内の百周年記念ホール。講演会は二部構成で、一部で京大の二人の先生の講義を、二部で洛南出身の京大生・院生による学部・大学生活紹介を行いました。参加した生徒たちは、ひと足お先に京大の雰囲気を味わいながら内容の濃い話に聞き入っていました。

第一部 講演会1 「ある大学教員の歩み〜ヒトの運動への興味の追求〜」

講師:萩生翔大先生(京都大学大学院 人間・環境学研究科 准教授)

スポーツはもちろん楽器の演奏やパソコンの操作、さらには料理や食事といった日常的な動作まで、ヒトの運動について研究されている萩生先生。地球に帰還した宇宙飛行士の運動能力を調べるため、NASAに行くこともあるそうです。萩生先生は中・高・大と陸上競技に打ち込み、研究者を目指したきっかけは「そもそも人間はなぜ走れるのか?」について深く知りたかったからだとか。

そんな萩生先生の講演のなかで印象的だったのは、中高生ならではの疑問を大事にしてほしいというお話。「なぜ恋に夢中になるのか?」「なぜ学校に行かなければならないのか?」「なぜスマホを触ってしまうのか?」といった、疑問に感じたことを自分なりに考えることが大切というお話に、みんな納得の様子でした。また文理選択をする際、純粋にロボットをつくりたいと思えば理系の工学、ロボットに心はあるのかについて考えたいと思えば文系の心理学というように興味によって選択が変わるので、自分はまず何がしたいのかを知ることが大切、というお話も印象的でした。

第一部 講演会2 「人工光合成でクリーンな水素社会を拓く」

講師:阿部竜先生(京都大学大学院 工学研究科 教授)

化学がご専門の阿部先生の研究テーマは、クリーンな水素エネルギーの自給自足。詳しくいうと、石油や石炭といった化石燃料を使うことなく太陽光を利用して水から水素を取り出し、その水素を発電などに利用するというものです。現在すでにエネルギーとして水素が利用されていますが、肝心の水素を取り出すのに化石燃料が使われているため、あまりクリーンではないそう。そこで阿部先生は植物が光合成をする原理を応用し、二酸化炭素を排出することなく水素を大量に、しかもリーズナブルに取り出す研究に取り組んでいらっしゃいます。

そんな阿部先生から生徒へのメッセージはズバリ、やりたい道に進んでほしい! もし今やりたいことが見つからなくても、アンテナを幾つも張っておけばいつか必ずそれが見つかる。その上で中学と高校で勉強に励み、基礎学力をつけてほしい。基礎学力はいわば「パスポート」であり、それがしっかりしていればやりたいことを選べる幅がグンと広がる、というお話はとても説得力がありました。

第二部 洛南卒京大生による学部・大学生活紹介

第二部では京都大学・大学院に進んだ12人の卒業生が、在籍学部・学科、専攻の魅力や高校時代にしておいてほしいことなどについてアツく語ってくれました。

1. 2018年卒業 文学部 人文学科 社会人1年目

大学では歴史学を専攻。この学科の魅力は多様な専修科目を取れることと、いろんな人と出会えること。大学では演劇に熱中し、希望通り演劇関係の会社に就職。皆さんもいつも新しい気持ちで、好きなことに取り組んでほしい。

2. 2020年卒業 経済学部 3年生

京大の経済学部は経済と経営が一学科にまとまり、必修科目が少なく自由度が高いことが特徴。中高と違って大学では強制されないので、計画的に勉強することが重要。高校の3年間は短いので、日々の生活を大切にしてほしい。

3. 2020年卒業 農学部 食料・環境経済学科 3年生

農学部には資源生物、応用生命、地球環境など多様な学科があり、自分は食料・環境経済学科で食料自給率の問題について学習。男女比率が1:1なのは女子にとって魅力的。大学では英語が重要なので、英語をしっかり学んでほしい。

4. 2019年卒業 工学部 工業化学科 3年生

祖父が京大出身で小学生のころから京大志望。この学科を含め、京大の魅力は自由な学風で同級生もいい人ばかり。学力と物ごとに粘り強く立ち向かう力は財産になるので、日々の勉強と受験を通して思考体力を養ってほしい。

5. 2020年卒業 法学部 3年生

法学部は出席点がなくテスト100%。つまり授業に出なくてもよく、その分留年生が多い。高校の定期考査では平均点を取ることが大切。洛南生はみな頭がいいので平均点ならそれはスゴいことと思い、日々の勉強を頑張ってほしい。

6. 2020年卒業 工学部 情報学科 3年

情報学科には2学科があり、コンピュータプログラムなどを学ぶ情報学科に在籍。京大を志望したのはオープンキャンパスで見た実験がきっかけ。大学の勉強は分かりづらく、洛南の授業がいかに分かりやすかったかを実感している。

7. 2020年卒業 工学部 建築学科 3年

少人数の建築学科は家族みたいな雰囲気で、女子の割合が多いのが特徴。音楽・アート好きが多く、高校時代に勉強しかしていなかったので大いに刺激を受けている。勉強だけでなく趣味や学校行事に熱中し、青春を満喫してほしい。

8. 2018年卒業 理学部 化学専攻 修士1年

高校生が対象の「ELCAS」という体験型科学講座に参加し、充実した設備を見て京大を志望。専攻の生物化学は「将来誰かの役に立つ基礎研究」。現在は大学院に通いながら、洛南で非常勤講師として「化学基礎」を担当している。

9. 2018年卒業 理学部 理学科(物理系) 4年

専攻は低温物理学で大学院に進学予定。理学科には留学したり自主ゼミを開いたりと「冒険」を楽しむ学生が多い。高校時代は分からないことがあれば先生に質問し、今それが冒険への扉を開くカギとなっていることを実感している。

10. 2018年卒業 理学部 理学研究科 物理学 宇宙物理学専攻 修士1年

放射線など宇宙の現象の解明に取り組んでいる。中2の富士山合宿で見た星空に感動し、この道へ。高校時代は応援団や書道部の活動に熱中。そのため夏休みに集中して頑張るなど、計画的に勉強することで京大合格の夢を叶えた。

11. 2020年卒業 薬学部 3年

薬学部では創薬のプロを育成し、薬剤師の資格を取るのは全体の2割くらい。1学年は80人ほどで全員で受ける授業が多いことからみんな仲がいい。高校では目標に向けた適切な努力を心がけてほしい。その記憶は将来きっと役に立つ。

12. 2018年卒業 医学部 医学科 4年

研究者は10年後に会ったことのない人を救うために全力を尽くす存在と考え、医師ではなく研究者を志望。高校時代にはいろいろなプレッシャーがあると思うが、死ぬときに自分はどうありたいかを考えて将来の進路を選んでほしい。